母のピアノ

家には子供のころから、グランドピアノがある。

母のピアノである。

40年以上が過ぎ、

鍵盤も一部剥がれている。

今は母しか使わない。

でも、数年に1度は

調律をしている。

このピアノには想いが籠っているのだ。

時代的にも、経済的にも、

母の子供のころ、

ピアノがある家は特別だった

音楽の道を志していた母は、

ピアノ教師をしながら、

学校の音楽室で練習をしながら、

ピアノを弾いていたらしい。

やがて、

音楽教師の道を選んだ母は、

学生時代、

小さなスタンドアップ型のピアノを購入。

父と出会い、結婚した時、

それを持ってきていた。

でも、母の夢はグランドピアノだった。

幼いころ、母に連れられて行った学校の音楽室には

必ずグランドピアノが置いてあった。

曲に合わせて、

弦が跳ねるのを珍しく、何度も覗き込んでいた。

やがて、父と母はマイホームを建てた。

ようやく、母の念願が叶い、

家のピアノはグランドピアノになった。

遊びに来た友達はみんな驚いていた。

わたしも得意げに

「猫ふんじゃた」

を弾いたりした。

後に、「猫ふんじゃった」は禁止されたが。。。

姉や妹は、そのピアノで練習を繰り返した。

今は時々、甥や姪が弾いていく。

母は今も毎日の練習を欠かさない。

ピアニストでもなく、伴奏者でもないけど、

指が動かなくなるのは嫌だという。

そして、また調律する時期にきたらしい。

我が家のピアノには、母の想いが詰まっている。

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